兼業・副業を行ううえでのポイントについて

令和2年12月25日  発行

働き方改革やコロナの影響といった様々な要因により、兼業・副業がクローズアップされています。今月号では、令和2年9月に改定された「兼業・副業の促進に関するガイドライン」の内容をもとに、兼業・副業を行う(会社として認める)にあたって検討すべきポイントについて解説します。

【兼業・副業のメリットと留意点】

◆ 兼業・副業には、労働者と企業のそれぞれに対して、以下のようなメリットと留意点があります。

  メリット 留意点
労働者

● 離職せずとも別の仕事に就くことが可能となり、スキルや経験を得ることで、労働者が主体的にキャリアを形成することができる。

● 本業の所得を活かして、自分がやりたいことに挑戦でき、自己実現を追求することができる。

● 所得が増加する。

● 本業を続けつつ、よりリスクの小さい形で将来の起業・転職に向けた準備・試行ができる。

● 就業時間が長くなる可能性があるため、労働者自身による就業時間や健康の管理が一定程度必要。

● 職務専念義務、秘密保持義務、競業避止義務を意識することが必要。

● 1週間の所定労働時間が短い業務を複数行う場合には、
雇用保険等の適用がない場合があることに留意が必要。

企業

● 労働者が社内では得られない知識・スキルを獲得することが
できる。

● 労働者の自律性・自主性を促すことができる。

● 優秀な人材の獲得・流出の防止ができ、競争力が向上する。

● 労働者が社外から新たな知識・情報や人脈を入れることで、
事業機会の拡大につながる。

● 必要な就業時間の把握・管理や健康管理への対応、
職務専念義務、秘密保持義務、競業避止義務をどう確保するかという懸念への対応が必要。

【企業として検討・対応すべきポイント】

◆ 兼業・副業を認めるうえで、企業として対応・検討すべきポイントには以下のようなものがあります。

① 安全配慮義務

・就業規則、労働契約等(以下、「就業規則等」という。)において、長時間労働等によって労務提供上の支障がある場合には、兼業・副業を禁止または制限することができるようにしておく

・兼業・副業の届出等の際に、兼業・副業の内容について労働者の安全や健康に支障をもたらさないか確認するとともに、
兼業・副業の状況の報告等について労働者と話し合っておく

・兼業・副業の開始後に、その状況について労働者からの報告等により把握し、労働者の健康状態に問題が認められた場合には
適切な措置を講ずる

② 秘密保持義務

・就業規則等において、業務上の秘密が漏洩する場合には、兼業・副業を禁止または制限することができるようにしておく

・兼業・副業を行う労働者に対して、業務上の秘密となる情報の範囲や、業務上の秘密を漏洩しないことについて注意喚起する

③ 競業避止義務

・就業規則等において、競業により、自社の正当な利益を害する場合には、兼業・副業を禁止または制限することができるようにしておく

・兼業・副業を行う労働者に対して、禁止される競業行為の範囲や、自社の正当な利益を害しないことについて注意喚起する

・他社の労働者を自社でも使用する場合には、当該労働者が当該他社に対して負う競業避止義務に違反しないよう確認や注意
喚起を行う

④ 誠実義務

・就業規則等において、自社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合には、兼業・副業を禁止または制限することができるようにしておく

・兼業・副業の届出等の際に、それらのおそれがないか確認する

⑤ 兼業・副業の
禁止または制限

・原則として、労働者は兼業・副業を行うことができるが、例外的に以下の①~④のいずれかに該当する場合には、
兼業・副業を禁止または制限することができるようにしておく

① 労務提供上の支障がある場合

② 業務上の秘密が漏洩する場合

③ 競業により自社の利益が害される場合

④ 自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合

⑥ 労働時間管理

・労働者が、事業主を異にする複数の事業場において、「労基法に定められた労働時間規制が適用される労働者」に該当する
場合には、労基法第38条第1項の規定により、それらの複数の事業場における労働時間が通算される。

・複数の事業場での勤務時間を通算して時間外労働が発生する場合、割増賃金の支払いや時間外労働の管理が必要となるため、就業規則等で兼業・副業先の勤務時間を把握できるようにしておく

※兼業・副業先がフリーランス、独立、起業、共同経営といった場合には、労働時間は通算されない