副業・兼業の促進に関するガイドラインについて

平成30年2月25日  発行

厚生労働省は、いわゆる「働き方改革」を踏まえ、副業・兼業の促進について、企業や労働者が現行の法令のもとでどのような事項に留意すべきかをまとめたガイドラインを平成30年1月に作成しました。今月号では、副業・兼業の促進に関するガイドラインの内容について解説します。

① 副業・兼業の現状

◆副業・兼業を希望する者は年々増加傾向

⇒副業・兼業を行う理由は、自分がやりたい仕事であること、スキルアップ、資格の活用、十分な収入の確保など様々であり、
副業・兼業の形態も正社員、パート・アルバイト、会社役員、起業による自営業主など多様です。

◆多くの企業では、副業・兼業を認めていない

⇒企業側は、自社での業務がおろそかになること、情報漏洩のリスクがあること、競業・利益相反になることなどが、
副業・兼業を認めるにあたっての課題点、懸念点と考えています。
また、副業・兼業における就業時間や健康管理の取扱いのルールが分かりにくいとの意見があります。

◆副業・兼業自体への法的な規制

⇒現在、副業・兼業に関する法的な規制はありません。

② 副業・兼業に関する裁判例

▼最近の裁判例では、労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは基本的には労働者の自由であり、各企業においてそれを制限することが許されるのは、①労務提供上の支障となる場合、②企業秘密が漏洩する場合、③企業の名誉・信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合、④競業により企業の利益を害する場合と考えられます。

【東京都私立大学教授事件(東京地判平成20年12月5日)】

⇒教授が無許可で語学学校講師等の業務に従事し、講義を休講したことを理由として行われた懲戒解雇について、副業は夜間や休日に行われており、本業への支障は認められず、解雇無効とした事案。

【十和田運輸事件(東京地判平成13年6月5日)】

⇒運送会社の運転手が年に1、2回の貨物運送のアルバイトをしたことを理由とする解雇に関して、職務専念義務の違反や信頼関係を破壊したとまでいうことはできないため、解雇無効とした事案。

③ 副業・兼業における企業の対応

(1)厚生労働省は、裁判例を踏まえれば、原則、副業・兼業を認める方向とすることが適当であると考えています。

副業・兼業を禁止、一律許可制にしている企業は、副業・兼業が自社での業務に支障をもたらすものかどうかを今一度精査したうえで、そのような事情がなければ、労働時間以外の時間については、労働者の希望に応じて原則、副業・兼業を認める方向で検討することが求められます。

実際に副業・兼業を検討するにあたっては、労働者と企業双方が納得感を持って検討することができるよう、労働者と十分にコミュニケーションをとることが重要です。

企業にとってのメリット 企業として留意すべきポイント

・労働者が社内では得られない知識・スキルを獲得することができる。

・労働者の自律性・自主性を促すことができる。

・優秀な人材の獲得・流出の防止ができ、競争力が向上する。

・労働者が社外から新たな知識・情報や人脈を入れることで、
事業機会の拡大につながる。

必要な就業時間の把握・管理や健康管理への対応、
職務専念義務、秘密保持義務、競業避止義務をどう確保するかという懸念への対応が必要。

(2)副業・兼業を認める場合、労務提供上の支障や企業秘密の漏洩等がないか、また、長時間労働を招くものとなっていないか確認する観点から、
副業・兼業の内容等を労働者に申請・届出させることも考えられます。

(3)労働者が、自社、副業・兼業先の両方で雇用されている場合には、労働時間に関する規定の適用について通算するとされていることに留意する
必要があります。

(4)各企業での検討にあたり、厚生労働省が改定したモデル就業規則の規定を参照することもできます。しかし、規定例の通り規定しなければ
ならないということではありませんので、労使で検討の上、企業の実情に合った規定にする必要があります。